不倫慰謝料で失敗する原因

文責:所長 弁護士 鳥光翼

最終更新日:2025年06月04日

1 不倫慰謝料の請求に失敗する5つ原因

 不倫慰謝料の請求は、不法行為に基づく損害賠償金の請求という、法律に基づいた金銭の支払い請求です。

 しっかりと支払いを受けるためには、法的な知識はもちろんのこと、実務的なノウハウも必要となります。

 大切なポイントをおさえずに行動を起こしてしまうと、不倫慰謝料の支払いを受けることが難しくなることもあります。

 不倫慰謝料の請求に失敗する代表的な原因としては、以下のものが挙げられます。

 ①証拠を取得する前に慰謝料請求をしてしまった

 ②慰謝料の相場や法的知識がないまま交渉をしてしまった

 ③相手の支払い能力・資産を確認せずに示談をしてしまった

 ④求償権の放棄をする旨の条項を加えずに示談してしまった

 ⑤違法行為をしてしまった

 以下、それぞれについて詳しく説明します。

2 証拠を取得する前に慰謝料請求をしてしまった

 不倫慰謝料の請求をする前提として、不貞行為の存在を証明する証拠を集める必要があります。

 証拠がないと、仮に訴訟になっても基本的には勝訴することができません。

 証拠がない状態で交渉をしても、訴訟で負ける見込みがなければ、相手は慰謝料の支払いに応じないと考えられます。

 証拠が揃っていない状態で先に慰謝料の支払いを求めてしまうと、相手に証拠を抹消されてしまうことや、不貞行為を一時的に止めて証拠を取得できないようにされてしまう可能性があります。

3 慰謝料の相場や法的知識がないまま交渉をしてしまった

 不倫慰謝料には事案に応じた相場が存在し、数十万円~300万円程度とされています。

 相場を知らずに請求してしまうと、的外れな金額を提示して話が平行線になってしまうことがあります。

 慰謝料に関する取り決めを示談書に記載する際にも、金額や支払期限、支払い方法等を明記しないと、支払いを受けられないことがあります。

 また、示談を行う場面の設定や、示談書への当事者の署名や押印を適切に行わなかった場合、後になって示談の不成立や取消しを主張されてしまうおそれもあります。

4 相手の支払い能力・資産を確認せずに示談をしてしまった

 せっかく示談が成立しても、相手に資力がない場合、慰謝料の支払いを受けられないということもあります。

 予め相手が保有している財産や勤務先などを調べておかないと、強制執行をするのも困難になります。

5 求償権の放棄をする旨の条項を加えずに示談してしまった

 不倫相手にのみ慰謝料の請求をする場合、不倫相手の負担割合を超えた分の慰謝料については、後で不倫相手から不倫をした配偶者へ請求することができます(求償権の行使)。

 示談の際に求償権を放棄する旨の条項を入れておかないと、離婚をしない場合には、求償権行使によって家計から不倫相手に金銭を支払うことになってしまいます。

6 違法行為をしてしまった

 証拠を収集する際に、不倫をした配偶者のスマートフォンのパスワードを解除してデータを閲覧することや、不倫相手の自宅敷地内に侵入することなどをしてしまうと、刑事上および民事上の責任を追及される可能性があります。

 スマホを勝手に見た場合、不倫の証拠となるのかについて解説しておりますので、こちらもご覧ください。

 また、交渉の際に高額な慰謝料を提示し、示談に応じない場合には勤務先に不倫の事実を伝えることなどを告知すると、恐喝などの罪に問われる可能性もあります。

 

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